【医学生】初めての医学部の試験を終えて

こんにちは。なぐーです。先日で夏学期の授業が全て終了し、試験も無事に乗り越えました。

医学部生として学士編入学してから4ヶ月が経過しましたが、この期間勉強する中で気づいたことをお伝えしたいと思います(学士編入受験生へのメッセージを込めた内容にもなっております)。

目次

学士編入試験の勉強が生きる

学士編入における生命科学

学士編入学試験でどの受験生も学んだ科目といえば「生命科学」です。この「生命科学」は非常に曖昧な表現で、受験する大学によって学習の範囲やレベルは異なりますが、概ね以下の学問の大学教養レベルを指すものと把握しています。

  • 細胞生物学
  • 生化学
  • 生理学
  • 発生学
  • 免疫学

特に大学で文系だった方、理系でも生物系の学部でない方にはこれらの学問は縁が薄く、学士編入試験のために初めて勉強した、という方も少なくはないのではないでしょう。学士編入試験ではほぼ全ての大学で生命科学が出題されるため、勉強に力を入れざるを得ず、予備校に通うなどして対策する方も多いようです。

勉強の結果、例えば「細胞内小器官、セントラルドグマ、相同組換え、RAA系、自然免疫、I型アレルギー、…」のような簡単な内容であれば説明ができるようになったかと思いますが、この基盤は医学部に入ってから非常に役に立ちます

基礎医学の学習との関連

通常、学士編入生は2年次に編入します。多くの医学部では2年次より医学専門教育が始まるので、学士編入生は入学直後からこの専門教育を受けることになります。

医学専門教育の授業は大きく分けて「基礎医学」「臨床医学」に分かれています。大雑把に説明すると、基礎医学では「正常な人の身体の仕組みや機能」について学び、臨床医学では「病気などによって正常な状態から離れた身体の状態、その治療法」について学びます。

入学直後は基礎医学を勉強することになりますが、これにはマクロな視点で人の構造を知るための組織学・生理学の他に、ミクロな視点では生化学・細胞生物学などが含まれています。

つまり、まさに学士編入試験で勉強した内容を基礎医学の授業で取り扱う訳です(もちろんレベルは少々上がりますが)。私の大学では、生理学や遺伝学、組織学などの授業が中心でしたが、上述のセントラルドグマ、RAA系等の知識があるだけで非常に楽になります。また、一通りの基礎を勉強しており、学習することの概観が捉えられているため、新しく学習したこととの紐付けが容易です

実際、試験にも以下のような問題が出題される傾向があります。

問題1. Ca2+代謝に関わるホルモンについて、産生機構・分泌機構・標的・役割を説明せよ。
問題2. 腎小体の機能と構造について、図解しながら説明せよ。

問題1はPTH、カルシトニン、活性型ビタミンD3などを説明すればよく、産生・分泌機構はともかく、標的や役割については学士編入試験の勉強で学習しています。問題2に関しても、腎臓の基本的な機能は既に知っていましたので、それを土台にもう少し詳しい内容について授業で勉強し、図解できるようにするだけです。

この2問について言ってしまえば、学士編入試験に合格した時点で、4割程度は既に理解している状態であり、この理解の有無は非常に大きいです。

おかげで、専門書でもっと深い内容を自習する余裕すらできました…!

受験生の中には「学士編入の勉強は大変だし、生命科学の勉強は範囲が膨大で気が乗らない…」と考えている方もいるかと思いますが、医師になるための勉強にも生きるとなると、少し勉強する気が出ませんか?

いくら勉強しても無駄になることは決してありませんし、勉強すればするほど合格確率が上がるだけでなく、入学後楽になりますよ。せっかくなので極めてしまってください。

医学部の授業の基本は「暗記」である

規則性のない暗記

これは医学部の授業を受け始めて最初に感じたことですが、かつてないほど勉強の中で暗記の占める割合が大きいです。印象としては、9割暗記、1割が理論といった感じです。

夏学期に私が勉強した骨学を例に出してみましょう。下の写真のオレンジで囲んだ円の中を見てください。

外頭蓋底(大学の授業プリント)

まず、この図は外頭蓋底といって、頭蓋骨を水平に真っ二つに切断した時の下側です。図の上の方に歯が見えていますが、これは下顎の歯ということになります。

オレンジの円の中には2つの黒い穴が見えますが、この左側を卵円孔(らんえんこう)、右側を棘孔(きょくこう)と言います。卵円孔は穴が卵型だからこう呼ばれますが、棘孔はどこが尖っているのか私にはわかりません。

役割としては、卵円孔は下顎神経が頭蓋骨の中から外に出るために通過する穴、お隣の棘孔は頸動脈から分岐した動脈が通るためのものです。

もう嫌になってきた方もいるかと思いますが、これは丸暗記です。なぜ卵円孔は神経が通り、棘孔は動脈が通るのか?と考えても、「人間の体は実際にそうなっているのだ」というのが回答です。覚えるしかありません。

薬学部時代にもある程度の暗記はありましたが、紐付けて考えられるものも多かったのです。

例えば、一口に薬の名前でも、その名前のつけ方には規則性が見出せます。逆に言えば、初めて聞く薬でも、名前から「こういう病気に使用する薬かな?」ということがある程度推理可能なのです。

例)
・アムロジピン(高血圧の薬):〜ジピン → 高血圧や狭心症の薬と判断できる
  →他の例としてニフェジピン、アゼルニジピンなど

しかし、残念ながらこれら体の部位にはまともな規則性がありません。せいぜい、「孔」だから穴かな、ということがわかるくらいです。医学部は暗記が多いとは聞いていましたが、これほどまでとは正直思いませんでした。

余談ですが、「卵円孔」という孔は心臓にもあります。ひどい話ですが、こんなのばかりです。

恨むべきは自分の脳のキャパシティか、名付け親か…。

暗記の多い試験を乗り切るためには

私は無事に夏学期の試験を乗り切ることができましたが、これはひとえに「早めに勉強を始めたから」であると考えています。特に暗記量の膨大な骨学などは試験の1ヶ月半くらい前から勉強を開始し、合計10周程度はできるようにスケジュールを組んで勉強していました。

勉強、特に暗記において重要な点はただ1つ、「覚えるまで繰り返すこと」です。なぜなら、映像記憶能力を持っている一部の特殊な人間を除き、人が1度で覚えられるのは見たことや聞いたことの一部しか覚えられないからです。

実際に、ドイツの心理学者 Hermann Ebbinghausが提唱した「エビングハウスの忘却曲線」の元になった実験では、被験者が単純暗記した文字列の節約率(忘れたものを覚え直すのにかかる時間をどれくらい減らせたかを示す割合)、20分後には58%、1時間後には42%、1日後には34%となっていました。

Ebbinghausの忘却曲線(フリー画像がなかったので著者作成)

つまり、覚えたものは早い段階で何度も繰り返すことによって、容易に思い出すことができるようになるのです。

そして、繰り返し回数を増やすためには、限り早めに始め、勉強期間を十分に確保するしかないのです。これが私が最初に述べたような戦略を取った理由です。

学士編入生はこのことに特に注意しなければなりません。理由は単純で、一般生よりも年齢が上だからです。よく引用されているMITの認知脳科学研究によると、純粋な記憶力や情報処理能力のピークは18歳、文脈のない言葉を記憶する力のピークは22歳とされています。

Business Insider
Incredible chart shows how intelligence changes as we age "At almost any given age, most of us are getting better at some things and worse at others."

原著論文はこちら:https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0956797614567339

悲しいことに学士編入生はとっくに記憶力のピークを過ぎてしまっているため、ただ脳の能力に頼るだけではなく、上記の忘却曲線に従って効率を上げるなど、何かしら工夫をする必要があると考えられます。

私は実際に、授業を受けながら「Anki」などの暗記アプリに問題を取り込み、授業後に効率的に反復学習ができるように工夫していました。

あわせて読みたい
Anki - powerful, intelligent flashcards

なお、Ankiは忘却曲線に基づいて、適切なタイミングで問題を再出題してくれるアプリです。
これについてはまた別の記事で紹介しようと思います。

まとめ

・学士編入試験で勉強した内容は入学後も大いに生きるので、ぜひ深く理解してください。
・医学部はとにかく暗記が多いです。自分が効率よく暗記できる方法を探しましょう。

実は、私の所属する大学は夏学期はそこそこゆとりのあるスケジュールでした。
秋学期以降は解剖の授業が入ってくるため、ハードなものになってくると予測されますが、頑張っていきたいと思います。

今後も、このような形で定期的に医学部での暮らしについても発信していきますね。

よかったらシェアしてね!
目次
閉じる